こんにちは、元国税調査官の女性税理士、中郡里奈です。恵比寿で開業しています。
先日5ヶ月かかった調査がやっと終わって是認通知をいただきました。
さて、調査をしていれば是認もあります。
是認とは、税務調査において特段修正(申告)すべき事由がないことをさします。
全く指摘事項がない場合も是認ですが、多少の指摘事項があっても金額が少額だったりした場合には修正申告にならず是認にすることがあります。
私が調査官だった頃は、増差合計で20万円以下の場合は指導にとどめて是認処理をする。という内部規定のような慣習のようなものがありました。少額修正は、納税者の納税意識を下げることになりますし、税理士にとっても手間がかかりますしね。
調査も慣れてきたころ、調査3連続で是認になったことがありました。
私は税務署で是認処理をしながら、斜め横に座っている上席調査官に言いました。
「私じゃなくて別の人が行ったら、増差(修正事項)がでたかもしれないのに。」
私が突然泣きだしたので、フロア全員が何事かとこちらを見ていました。
きちんと納税している会社はたくさんあります。ですので、通常なら是認の場合でも胸を張って統括に報告します。
会社がきちんとしていて納税していたことはとても良いことで、そこが悔しい訳ではありません。調査対象会社を自分で選定し、前年比較や分析などを行って、何か隠しているかもしれないと見込んで調査に臨んだ自分の目利き力のなさが悔しいのだと思います。
その時は、是認が連続したために自分の調査手法に自信がなくなってしまいました。
上席調査官は、
「いいんだよ。仮に何か悪いことをしている会社だった場合、今回の調査で何も指摘されなければ、その会社は見つかるまで悪いことをし続けるものなんだよ。だから次回の調査の時に別の人が見つけてくれるから大丈夫だよ。そのためにも定期的に調査にいくんだから。」
と教えてくれました。
本当に胸が撫で下ろされました。私の調査官時代で最も強く思い出に残っている言葉の一つです。
決して、「じゃぁ何も出なくても気にせず次の調査官にお願いすればいっか。」という気持ちではなく、うまく言えないのですが、私(の仕事)には、後ろに沢山の人が支えてくれているんだという思いと、自分も同じように他の人を支えられるようになれたらという気持ち、、とでも言うのでしょうか。国家公務員の本質のようなものに(やっと)気づいた言葉でした。
その場にいなかった先輩の調査官が税務調査から帰ってきて、一連の話を聞いたらしく、私に話しかけてきました。
「聞いたよ。大泣きしたんだって?(笑)、、、でも俺、そんなに調査に真剣になったことなかったから、なんか考えさせられちゃったよ。」と。
今このブログを書きながら、あの頃のような真剣さって最近いつ出しただろうか。と考えさせられてしまった懐かしい是認の思い出です。