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税務調査

税務調査の思い出~架空人物を使った課税漏れ②

税務調査の思い出~架空人物を使った課税漏れ②

元国税調査官、女性税理士の中郡里奈です。恵比寿で開業しています。

 

(①の続きです)

更衣室にはタイムカードがありました。おそらく出勤してタイムカードをまず押し、それから着替えて工場へ行くのでしょう。

 

タイムカードを並べておく棚が気になりました。

それぞれのポケットに2枚ずつ入っています。AさんとBさんのタイムカードのようです。

 

よく見ると、Aさんが朝8時前に出勤し12時05分に退社すると、Bさんが12時06分に出社し17時過ぎに退社しています。

他の棚のタイムカードを見ると、同じくCさんが8時前に出社して12時過ぎに退社すると、Dさんが12時過ぎに出社して17時過ぎに退社していることが分かりました。

このような組み合わせが何十組もありました。

 

事務室に戻ってから社長に質問しました。

「このAさんとBさんは同一人物ではないですか。お昼に更衣室に戻ってきた時にAさんからBさんへタイムカードを打ち替えてますよね。」

 

所得税においては給与の方は103万円超、社会保険料においては130万円以上の収入になるとそれぞれ課税対象になります。また夫の会社によっては扶養手当が外れたりするのかもしれません。

実在しているAさんが専業主婦などで収入がないBさん(親戚や友人)の名前を借り、それぞれ103万円以下にすることにより、所得税や社会保険料などが課税されないようにしていました。

 

社長も本当は悪いことだと分かっていながらも、大切な従業員からのお願いで断れなかったようでした。今回税務調査で指摘されたことで、社長にとっても自分が悪者にならずに止めさせることができて良かったのかもしれません。

源泉徴収漏れとして重加算税を含めて納付していただき、税務調査は終了しました。

 

 

6人の面接官は興味深く私の話を聞いてくださり、無事に入社することが出来ました。

遠方まで頑張った甲斐のある思い出の税務調査です。