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税務調査の思い出~架空人物を使った課税漏れ①

税務調査の思い出~架空人物を使った課税漏れ①

こんにちは、元国税調査官の女性税理士、中郡里奈です。恵比寿で開業しています。

今年の一文字が「税」であることにちょっと驚きました。

 

 

私は国税局(税務署)を辞めた後、税務の経験を積むために大手税理士法人へ就職活動をしました。

本命の税理士法人では、私一人に対してパートナー6人という形式の、ちょっと緊張した面接となりました。

志望動機、入所してからやりたい仕事、将来の目標など色々回答を準備して面接に臨みましたが、パートナーから聞かれた質問は一つでした。

 

 

「あなたの思い出に残っている税務調査を一つ話して下さい。」

 

想定外の質問に少々怯みましたが、私は真っ先に思い浮かんだある調査の話をし始めました。

 

 

 

その会社は、医療用の手術針を製造している会社でした。医療用の手術針とは、いわゆる針穴のようなものはなく、針のお尻から直接糸が付いていて丸くカーブしている小さい針です。

 

納税地であるご自宅にお伺いすると、奥の座敷に社長と税理士が座っており、膝元には元帳や申告書が少し置いてありました。

「社長、他の資料はどこでしょうか。」

「群馬の工場です。」

 

資料はすべて納税地にあると思っていた私。またしても甘かったです。

これでは調査になりません。

「社長、工場にお伺いさせて下さい。」

別途日程調整し、群馬まで調査に行くことになりました。

 

群馬の工場に着くと、社長は一通り工場を案内してくれましたが、社長が案内してくれなかった気になる箇所がありました。

「社長、更衣室も見せて下さい。」

 

通常、更衣室などを確認する時は、女性調査官が立ち会うことが多いと思います。女性でないと失礼になる場所などがあるからです。ですので社長宅や女性が多い会社に無告知等で調査に行く時などには、他の調査部門から同行の声がよく掛かりました。

 

もしかしたら男性調査官なら断られた(断る口実があった)かもしれませんが、女性でしたので更衣室を見せていただけることになりました。

工場なのでパートの方が多く、更衣室にはロッカーや休憩スペースなどがありました。

 

そして、タイムカードがあるのに私は気が付きました。 (続きます)