元国税調査官!女性税理士の中郡里奈です。恵比寿で開業しています。
調査3年目くらいの頃、建設会社へ一人で税務調査に行きました。
真っ黒に現場焼けした社長と、経理や事務全般を担当している奥様と、顧問税理士の立会いの下、2日間の予定で税務調査が始まりました。
元帳を確認していると、外注費にラウンドな数字(〇〇百万円など端数がない金額)が見受けられました。帳簿の摘要欄には何も記載されていません。しかも現金払いです。
なにやら臭いますね。
「社長、この外注費の請求書と領収書見せてもらえますか。」と尋ねたところ、手書きの領収書が出てきました。
「社長、請求書は?」「ない。」
くさいです、とても。
「社長、この領収書に記載されている番号に電話してもいいですか。」「、、、どうぞ」
「使われていませんね。社長、正直に話してください。」「言えない」
「話してもらわないと、使途秘匿金になって通常の法人税の他に40%課税されてしまいますよ」「。。。」
しばらくの沈黙がありました。社長とずっとにらみ合ったことを今でも覚えています。
「わかりました。今日はこれで帰りますが、調査の延長をさせてください。また連絡します。」そう言って会社を後にしました。
翌日、税務署が開く8時半ちょうどに、社長と税理士2人が税務署へ駆けつけてきました。
税理士が切り出し、「外注費は、愛人への手切れ金として支払ったものです。愛人の名前と住所と連絡先はこちらです。確認してもらって構いません。」そう言ってメモを差し出しました。昨日は奥様がいる手前、どうしても言い出せなかったとのことです。
外注費は役員賞与として修正し、法人税及び消費税は重加算税対象、源泉所得税も追徴課税となり調査は終了しました。
調査を通じて、大人社会というものを勉強させられた思い出の税務調査です。